2020年6月、東京都町田市で当時2歳の長男を母親が布団にまいて殺害したという痛ましい事件がおきました。双子の長女に比べて発達が遅く、悩んでいたと言います。
多胎育児で追い詰められる家庭は増えています。
母親にのしかかる育児の負担とストレス
双子の長男は生まれた当初500gの未熟児だったとのこと。
事件が起きた当時、身長は平均より10cmほど低く77cm、体重は4kgほど軽く、7.8kgでした。長女と比べて身体の発達が遅く、言葉にも遅れが見られたそうです。
さらに持病を持っていたため、タンの吸引もかかせなく、よく吸引を嫌がって泣いていたようでした。事件の当日も朝からぐずっていたそうです。
東京地検立川支部は7月、母親を処分保留で釈放しました。
布団で巻く、という行為があったものの、死亡との因果関係は慎重に見極めなければならない、と判断されたとのことです。
「本当に他人ごとではない」多胎児を抱える保護者
双子や三つ子を育てる母親からは、「他人ごとではない」「町田市の事件の母親は私だったかも」などどいう声が多く寄せられました。
ある母親は、1日中二人の育児にかかりっきり。毎日睡眠時間は3時間ほど。一人が泣くとも一人もつられて泣くし、どちらか一人だけミルクの飲みが悪いと悩んでしまうと言います。
カッとなって怒鳴ったりし、自己嫌悪に陥ることも多々あるそうです。
母親たちはその感情をこう表現します。
「コップの水が表面張力でぎりぎりこぼれていないような状態。何かの拍子に感情があふれてしまう」
大変さを語らう場があればと、この母親は2月にサークルを立ち上げました。その母親は「うちもそんなもん」という言葉に救われたといいます。
自分だけじゃないんだと思えたとのことです。
多胎児の母親を孤立させないで!
2018年1月、愛知県豊田市では、母親が生後11か月の三つ子の次男をたたきつけて死亡させる事件が起きています。
多胎児の負担ついて、SNS上や国会でも話題になったこともありました。
国は、多胎児のいる家庭を支援するサポーターを派遣する事業を始めたばかりです。
日本多胎児支援協会によると・・・
双子や三つ子が生まれる確率は妊婦100人につき1人程度のため、身近に感じにくい環境がありますが、近年は出産年齢の高齢化により、多胎児は増えていると言います。
気軽に相談できる環境を整え、孤立させない仕組みが大切と語っています。
妊娠が分かった時点から子育てまで、行政が継続して支援していくことが必要です。
★日本多胎児支援協会(兵庫県神戸市)
078-992-0870
ニーズや支援の実態調査、研修会や講演会の開催、地域サークル活動の支援などを行っています。
★ツインマザーズフォーラム(東京都新宿区)
inform@tmcjapan.org
電話相談、意見交換や講習会の開催、発達の遅れや障害がある子どもの支援などを行っています。
2020年8月15日朝日新聞朝刊より出典