子どもの習い事として昔から人気のある水泳教室。心肺機能が向上するため、ぜんそくが予防できる・治ると言われていました。しかし近年の研究では効果がないことが判明しました。
昔はなぜか、ぜんそくが良くなると言われていた
水泳は昔から子どもの習い事として大変人気があります。水中で全身運動ができますし、大きなけがの心配もありません。浮力に身をゆだねているだけで楽しく、笑顔があふれる子どもも多いのではないでしょうか。
かつて、ぜんそくなどのアレルギー症状が改善すると言われていたことがあり、予防や治療のために習わせている親御さんがたくさんいました。
数十年前は「親の過保護がこどものぜんそくを引き起こす」といった全く根拠のないことが言われていたこともあり、少しでもよ改善させたいという親心もあったのかもしれません。
国立成育医療研究センターの大矢幸弘アレルギーセンター長らのグループは、「ぜんそくや鼻炎の予防や治療の効果はない」としています。
この論文は、アメリカの科学誌プロスワンに掲載されました。
3歳から2年間1100人を調査した結果・・・
2003年11月~2005年12月に同センターで産まれた約1100人について、3歳の時点で水泳教室に通っているか、喘鳴(ぜんめい-気管が狭くなることで呼吸時にゼーゼーヒューヒューという音がする)の症状があるか、鼻炎の症状があるかなどを調査しました。そして5歳になるまで経過を観察しました。
1100人のうち3歳の時点で水泳教室に通っていた子どもは126人で11%。3歳までに喘鳴をの症状があった子どもは24%で265人。鼻炎の症状があった子どもが27%で299人でした。
5歳の時点で過去1年間に喘鳴の症状があったのは16%の180人。鼻炎の症状があったのは35%で387人でした。
3歳の時点で喘鳴の症状のある子どもとない子どもが水泳教室に通ったことで、5歳になった時点で症状があるかないか関連を調べたところ、統計学的に見て意味のある差は見受けられなかったとのことです。
もともと水泳はぜんそくの発作がおきにくいスポーツだったからか?
水泳はぜんそくの患者でも参加しやすいスポーツでした。そのため、ぜんそくの患者が水泳を選んでを習っていたことがうかがえます。日本列島は海に囲まれ、水が豊富にあったことも関連しているのかもしれません。しかしそれは治療法が少なく薬も足りなかった時代の話。
今では治療法も薬も格段に進化を遂げています。ですからぜんそくの患者であっても、どんなスポーツも楽しめるようになりました。
塩素が症状を悪化させることも
プールの水の消毒に使う塩素。海外では塩素によりぜんそくが悪化するという報告もあるそうです。
ぜんそくの子どもが長時間泳ぐと症状を悪化させる恐れもあるので注意が必要です。
近年は次亜塩素酸水を使用し、塩素で肌や荒れてしまう人でも入りやすいプールもあるとのことです。
2020年6月30日(火)朝日新聞朝刊より出典