4月1日で、消費税が導入されてから35年が経過いたしました。現在、税目別の税収の中でも消費税が最も大きな割合を占めるようになっています。しかし、消費税には所得の低い方ほど負担が重くなる逆進性があり、そのために消費税を徴収しない方針を貫いている店舗も見受けられます。
(※2024年3月30日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
駄菓子屋のこだわり-消費税を超えた子どもたちへの思い-
「すごくない? 当たりだったよ!」と声が響いたのは、3月下旬の東京都北区にある駄菓子屋「斉藤商店」。小中学生が次々と訪れ、店内は活気に満ちていました。 この店は1947年に創業し、同年生まれの斉藤敏夫さん(76歳)が2代目として店を守っています。斉藤さんが店を継いだのは、勤務先を定年退職した約15年前のこと。しかし、消費税が導入された35年前のことは今でも鮮明に覚えていらっしゃいます。
当時の消費税率は3%で、売り上げの計算が煩雑になるとして、レジスターを売り込む業者が後を絶たなかったそうです。斉藤さんのご両親はその中の1台を購入しましたが、結局一度も使用することはありませんでした。なぜなら、「子どもたちに消費税を負担させるのは心苦しい」との考えから、消費税分を取らないことを選んだからです。
その後、税率が5%、8%と上がる中で利益率が低下しても、斉藤さんは方針を変えず、ほとんどの年で赤字を抱える結果となりました。
消費税を取らない理由とは
年間売り上げが1千万円以下のため、消費税の納税義務はありませんが、年金がなければ生活が成り立たない状況です。それにもかかわらず、消費税相当額を上乗せしないのはなぜでしょうか。
斉藤さんは、子どもたちのお小遣いが以前からほとんど変わっておらず、小学1年生なら100円、2年生なら200円という具合に設定されていると感じています。一方で、物価は上昇し、買える商品の数が減り、当たり付き駄菓子の「当たり」の確率も下がったと感じています。そのため、消費税を負担させることで、さらに子どもたちが店に足を運ばなくなるのではないかという不安があるのです。
駄菓子屋の選択、増税の中で子どもたちを守るために
経済的な問題だけではなく、自民党派閥をめぐる裏金事件では、政治家たちに対して税逃れに厳しい視線が向けられています。真面目に納税する人々が損をしているような現状に加え、斉藤さんは「消費税を負担しても、私たちに何かが還元されているとは感じられません」と述べています。「そんな中で、少なくとも私の店では子どもたちに税金を負わせたくありません」と強調しています。
しかし、今後さらなる増税が予想される中、斉藤さんは「価格転嫁しなければ、もうやっていけません。最終的には店を閉めることになるかもしれません」と将来を見据えた懸念も示しています。
消費税の逆進性-低所得者への重い負担と税収の増加-
消費税は「広く薄く消費に負担を求める」目的で創設されました。当初の税率は3%でしたが、財政再建や社会保障の財源確保を理由に段階的に引き上げられました。10%に達した際には、低所得者への配慮として、飲食料品や新聞などの生活必需品は8%の軽減税率が適用されました。
税率の引き上げに伴い、税収も年々増加しています。導入初年度の税収は約3.27兆円でしたが、31年後の2020年度には約21.0兆円に達し、初めて所得税を上回りました。それ以降、消費税は「税収1位」の地位を確立しました。
税法に詳しい青山学院大学名誉教授の三木義一氏は、消費税の「逆進性」が強く、所得の低い人々に重い負担がかかる一方で、その対策が十分に取られていない現状について「非常に深刻な問題です」と指摘しています。
消費税の痛税感と政治への不信、もっと透明性を
消費をするたびに税相当分を支払うため、最近の物価高の中で負担感が一層増しています。「低所得者ほど、消費税による『痛税感』が他の税目よりも大きい」との指摘があります。
さらに、政治と金銭の問題により、政治家への信頼が揺らいでいる現在、「消費税のおかげで生活環境が改善されたと国民が実感することはない」と三木さんは述べています。また、税負担と財政支出の関係が不透明である現状に対し、税の使途をより透明にするために、政治家が積極的に取り組むべきだと訴えています。