気温や湿度が下がると流行するインフルエンザ。今シーズンは新型コロナウイルスとの同時流行が懸念され、戦々恐々としている人も多いでしょう。
インフルエンザワクチンについて、日本では13歳未満の子どもは2回接種することになっていますが、海外では一般的に9歳以上は1回としています。
今年は予約で一杯のインフルエンザワクチン
厚生労働省は、今シーズンのインフルエンザワクチンの供給量を約3178万本とし、これは過去最大の数とのこと。すでに日本では病院によっては9月頃から予約を受け付けていて、どこもすぐに予約がいっぱいになってしまい、
途方に暮れている人もいるでしょう。
日本小児科学会などで21の団体で構成される予防接種推進専門協議会では、今年はワクチンの不足が懸念されるため、接種を1回とし、より多くの子どもにワクチンがいきわたるようにしたほうがいい、と求めていたそうです。しかし、ルールを変えることはそう簡単にはいきません。
日本だけ「子どもは2回接種」となったのはなぜ?
日本では小学生の間は2回接種と認識している保護者が多いでしょう。ですが、世界保健機構(WHO)やアメリカ疾病対策センター(CDC)では、9歳以上は1回でOKとしています。
新潟大学小児科の斎藤昭彦教授によれば、昔は副反応で熱を出す子どもが多く、心配する保護者が多かったとのこと。そこで1回に接種する量を少なくし、2回接種することで効果を持続させるようにした、という歴史があるそうです。
しかし、海外では9歳以上は1回接種が一般的であり、生後6ヶ月から8歳でも、前年にワクチンを接種していれば1回でOKとしています。
専門家らは「1回でじゅうぶんな効果は得られる」としている
斎藤教授は以下を提案しているそうです。
・生後6ヶ月~9歳未満→前年度に接種した場合は1回、していない場合は2回
・9歳以上→前年度に接種していてもいなくても1回
しかし妥当な判断が難しく、簡単には変えられないとのことです。
相生会臨床疫学研究センターの広田センター長によると、初めて接種する場合は2回必要だが、それ以降は1回接種でも感染を防ぐための抗体は十分にできるため、1回でも2回でも効果は変わらないとしています。
その医療機関の医師の裁量判断だが、説明が難しい現実
医療の現場では、接種回数の判断は医師の裁量にゆだねられており、医師が決めて良い、ということになっています。ですから、「うちの病院では子どもでも一回の接種です」としていいことになっています。
しかし、今シーズンにいきなり「1回で」となると、保護者からは「ワクチンが足りないから急きょルールを変更したのでは」と不信感を抱かれるでしょう。
もし1回しか接種していない子どもが感染した場合、「1回しか接種させてもらえなかったから感染した」と言われる可能性もあるでしょう。
そのため、医師の裁量に任せられているといっても、1回で十分だという理由を説明するのが難しいかもしれません。
2020年10月28日(水)朝日新聞朝刊より出典