妊娠・出産という命の営みについてはまだまだ分からないことも多く、奇跡の世界。近年はさまざまな研究が進み、お腹の中の胎児がどのように過ごしているかが分かるようになってきました。
様々なことが分かるようになった胎児の超音波検査
子宮の中という密室で、羊水に満たされた中で過ごしている胎児。超音波検査が発達したおかげで、お腹の中の胎児に愛着を持ってもらったり、安全な出産に向けて備えたりできるようになりました。
赤ちゃんは羊水を飲んでおしっこする!?
長崎大学病院の産婦人科医、増崎さんは、胎児の様子を10時間ほど観察したことがあるそうです。すると、胎児は羊水を飲んで約1時間後におしっこをしていることが分かりました。その量は1日に700mlにもおよぶことが分かりました。
身体の表面からおちた細胞などを腸にためて、それ以外はおしっことして放出します。これで、羊水は常にきれいに保たれるわけです。
ウンチは産まれるまで出さない
出産経験のある人は、赤ちゃんのはじめてのウンチが黒緑色をしていることをご存知でしょう。これは、胆汁の色素のためとわれています。
赤ちゃんは生まれるまでウンチをしません。出産時、産道を通る時におなかが押されて、初めてお尻から出てきます。
低酸素状態など胎児が弱っている時は子宮内でウンチをしてしまい、羊水が濁ることがあります。
産まれてから肺呼吸をはじめる赤ちゃん
胎児は肺呼吸をしていません。産まれたときの産声で肺呼吸に切り替わります。
超音波の検査によると、胎児は鼻から羊水を出し入れしていることが分かりました。産まれた後の産声や肺呼吸に備えて。肺を鍛えているのでは?とも考えられています。
胎児の表情や体調までわかる
最新の超音波器では、リアルタイムで赤ちゃんを立体表示できます。寝ているとき以外は、目を開けたり、不快そうな表情をしたりしている様子がわかります。せわしなく動いたりしゃっくりをしたりも。しかし、まだまだ胎児には謎が多いそうです。
思わぬ病気も分かる・・・
技術の進歩によって、胎児の思わぬ病気がわかるようにもなりました。中には、治療法がない病気が判明することもあります。また、妊婦を採血するだけで染色体の変化がわかるようになり、このため多くの胎児が中絶されている、悲しい現実もあります。
2020年1月27日(月)朝日新聞朝刊より出典